インプラント治療で使われる主な器具と管理ポイント

診断・計画工程で使用する器具

三次元画像診断機器（CTスキャナー）

顎骨の厚みや神経、血管の走行を把握するために用います。三次元シミュレーションソフトへ取り込み、埋入位置・角度を可視化して安全性を高めます。

口腔内スキャナー

歯列を光学的に読み取り、模型採得に伴う不快感を抑えつつデジタル模型を作製します。撮影データはプリンター出力やCAD/CAM設計にも活用されます。

アナログ模型作成器具

従来法ではシリコーン印象材や石こう模型が用いられます。物理模型は咬合関係を確認しやすい利点があり、デジタルデータと併用するケースもあります。

埋入手術工程で使用する器具

ドリルキット

顎骨にインプラントを埋め込む孔を段階的に形成する工具群です。径や長さが異なるドリルを順に使用し、骨の摩擦熱を抑えるため冷却生理食塩水を併用します。

インプラントモーター

ドリルの回転数とトルクを制御し、計画通りの速度で骨切削を行う電動装置です。トルク管理は過負荷による骨壊死を防ぐ目的で重要視されています。

サージカルガイド

シミュレーション通りの位置や角度でドリル方向を維持するテンプレートです。ガイドスリーブに沿って器具を挿入するため、オペレーターの体格差や視野条件に左右されにくい点が特徴です。

補綴装着・調整工程で使用する器具

仮歯製作用器具

レジン材やワックスを加工するハンドツール、熱圧成形器などが含まれます。治癒期間中の審美的・機能的サポートとして仮歯を作製する際に用います。

咬合調整ツール

咬合紙、樹脂バー、ポリッシングポイントなどを用いて咬合接触を均一化します。インプラントは天然歯より咀嚼圧の逃げが少ないため、面接触を目指すことが推奨されます。

器具選定時のチェックポイント

• メーカーの供給実績と部品互換性（転院時の部品入手のしやすさ）
• 材料の生体適合性とアレルギー配慮（チタン・ジルコニアなど）
• 機器単体の導入コストと保守契約の内容
• 周辺機器との統合度（ガイドソフトやプリンターとの接続）

衛生・滅菌管理の要点

インプラント器具は血液や唾液に接触するため、洗浄・滅菌手順の遵守が不可欠です。オートクレーブ適合温度やケミカルインジケーターの管理に加え、ハンドピースの内部洗浄専用装置を導入する医院も増えています。滅菌バッグには使用日と担当者を記載し、トレーサビリティを確保します。

デジタルワークフローと機器の最新動向

近年は口腔内スキャナーと金属3Dプリンターによるカスタムアバットメントなど、デジタル技術が工程を一体化する例が増えています。データ連携により模型レス化が進む一方、機器間の互換性やデータ保護体制の確認も重要です。

器具管理を確認する際の質問例

• 使用しているインプラントシステムのメーカーと型番は何か
• 術前シミュレーションソフトの導入有無と操作担当者
• ハンドピースの滅菌サイクルとメンテナンス頻度
• サージカルガイドは院内製作か外部委託か
• 咬合調整後のトルク管理や定期チェック体制

まとめ

インプラント治療で用いられる器具は、診断・計画、埋入手術、補綴装着という各工程で機能が分かれています。器具の適切な選定と衛生管理、デジタル機器の運用体制を確認することは、安全性と治療計画の再現性を高める要素になります。治療先を検討する際は、導入機器の概要や管理方法についてカウンセリング時に質問し、納得したうえで選択すると安心です。